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このシリーズでは、トレードをあえて賭け事、つまりギャンブルであると表現し、アナタが賭け事で成功するために理解すべき7つの重要な考え方について触れていく。これは、長期的に賭け事で成功を収めるために身に付けなければならない考え方だ。ギャンブルを否定し、リスクを取ることを嫌いながらもFXで成功を夢見る 利己主義な方には、全くもって役に立たない話 である。


⑤トレードに自尊心を持ち込むな

いくつかあるポーカーの種類にテキサスホールデムってのがある。日本ではあまり馴染みがないかもしれないが、世界では1億人以上の競技人口があり、チェスと並ぶ世界最大規模の頭脳ゲームだ。理論的思考戦略、運、メンタルタフネスの3拍子が揃った高いスキルが要求され、競技性も非常に高い。IOC国際オリンピック委員会の正式種目にも認定されるマインドスポーツという側面を持っている。ラスベガスで毎年開催される世界大会は、優勝賞金が12億円を超えるビッグイベントとなる。
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期待値がプラスとなる戦略を用い、勝てる見込みが無い時はゲームから早期撤退する。もしくは最初からそのハンドに参加しない。また確率的に優位性のある局面では積極的にリスクを背負って利益を狙っていくプレースタイルは、トレードとの共通点が数多く存在する。

世界で名を挙げた優秀なトレーダーの中には、元々プロのポーカープレイヤーだった者もいるし、トレーダーの中にも趣味としてポーカーを嗜む者が多い。俺もポーカーを趣味としているし、もっと言えば『FXは食っていくためのライスワーク、ポーカーは人生を通じたライフワーク』っていう位置づけだ。ポーカーの対戦相手は目の前にいるから、リアルな駆け引きが魅力となる。

ポーカーの回転率の速さはトレードにおいて最も重要な大数の法則を短時間で体感することが可能となり、ポーカーで培った確率思考と相手の
思惑を読む技術(勘)はトレードにも良い影響がある。またトレードで培った忍耐力はポーカーにも良い影響がある。

弱い
ポーカープレイヤーの共通点は、ライバルプレイヤーの思惑を読もうとせず、自分のハンドの強弱しか考えない。弱いトレーダーの共通点は、上がるか下がるかを当てようとするばかりで、環境認識(大きな相場観から他のトレーダーの思惑を読む)が甘い。また、ポーカーはルールが非常にシンプルだが、極めるのは一生不可能と言っても過言ではない。同様に、エントリー、損切り、利食いの3つの判断しかないトレードのシンプルさゆえに極めることは一生不可能、というところもポーカーとトレードの類似点となる。

カジノのポーカーテーブルには自尊心が非常に強そうなプレイヤーの多さに驚かされるだろう。自分の腕自慢をしたり、悪気があるなしに関わらず他人を傷つけるプレイヤーが存在する。

これは実際にカジノのポーカールームで俺が経験したことだ。英語が苦手ということもあり、俺はポーカーテーブルで誰とも話さない。ある日、嫁さんと同じテーブルに並んでプレーしていたとき、俺が拙い(つたない)英語でディーラーのオファーに応えていると、はす向かいの白人男が『英語も話せないのにポーカーをするんじゃねえ!テメーが勝てると思ってんのか?』って俺を罵ったらしい、後で嫁さんから聞いたんだけどね。ディーラーもソイツの悪態に注意していたけど、行儀の悪さは収まらなかった。

あるハンドで、俺はスペードのエースハイフラッシュが完成した。コミュニティーカードにペアがないので他のプレイヤーがフルハウスやクワッズ(4カード)を完成させた可能性はなく、ストレートフラッシュを警戒する場面でもなかった。要するに、俺はナッツ(最強ハンド)を持っていた。

そんな時に、例の白人男がオールインしてきた。せいぜい3カードか2ペア、もしくはブラフだと判断した俺はコールした。そして
白人男はチップ全額を失い、思いっきり不貞腐りながらテーブルを去って行った。

嫁さん曰く、『アナタが英語を理解できなくて良かったよ。もしアイツが言ったことを理解していたら、きっと殴りに行くでしょ。』

今、トレードにおいても同じようにネット上で自尊心を振りかざす者がいる。Youtubeを利用して自分のスキルを自慢したがるスキャルパー達だ。俺のトレードスキルには1ミリも役に立たないが、たまに娯楽としてこういった動画を観ることはある。大したボラもないのにせっせとスキャルをやるって俺にはできないから、ある意味スゲーことだと思う。中には本当に技術を伴った猛者もいるとは思うが、以前、俺が見た動画は本当に酷かった。

2016年11月9日の米国大統領選挙速報でスキャルピングを行い、一時的とはいえ1500万円以上の含み損を出しながらもナンピンをしまくり辛うじて収支をプラスにして、『
俺のトレードスキルは凄いだろ!』っていう内容の動画だった。

確かにある意味凄いんだよ、俺なら絶対に損切っている場面だったし、よくもこんな”たまたま勝てただけのトレード”で自画自賛できるもんだなって呆れたものだ。こういう類の動画を”トレードの勉強の為”に観る初心者もいるんだよな。彼らにはトレードの良し悪しの判断がつかないから、損切りせずにナンピンしまくって強引に利益を追及するトレードスタイルが”派手でカッコいいもの”と見えてしまうかもしれない。”計画的なナンピン”という言い訳を”知的でクールな戦略”と勘違いするかもしれない。

実は最近、Youtubeでトレードの勉強をしているという趣旨のメールが数件届いている。そんなもんで相場の勉強になるのかどうか、俺は首をかしげていた。

計画・無計画に関わらず、ナンピンは弱気で愚かな行為だと俺は断言する。ナンピンするくらいなら最後にナンピンする場所までエントリーを我慢すればいいだけ。含み益を出してから追撃(増し玉)を狙うほうが良い。初心者は、相場を読み間違えた自分を認めることができない弱さを、
”計画的なナンピン”という言い訳にすり替えてはいけない。(計画的なナンピンで大損した昔の俺からの魂の叫び)

相場が反転すればナンピンと追撃は同じようにも見えるが・・・
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平均取得単価を上げるという言葉から追撃を恐れ、平均取得単価を下げるナンピンを選ぶ初心者トレーダーもいるようだが、これはハッキリさせておこう。

それは間違っている。
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そして、ナンピンしてでも小さな勝ちを狙う
トレードスタイルを真似した初心者の行く末は、遅かれ早かれ相場から撤退するのみだ。本質的に損小利大なトレードというものは地味で忍耐力を要するものだ。エントリー直後に即損切りなんてことは日常茶飯事だし、スイングに持ち込んだら利食うまで何日も先となり、利食えるかどうか不安な日々を過ごすことになる。含み益がダウンスイングしてきた時のプレッシャーはきついぞ!しかも、何日も保有したのに含み益から反転して損切りになることだってある、これは慣れているはずの俺でもキツい(汗。

本当に金を儲けたいのであれば、ディーリングデスクに座る前に自尊心を棄てるべきだ。相場の前では自尊心など何の役にも立たない。自分のトレードに自信を持つことは大切だが、”過信”は悪となる。『たかが自分如きの分際で為替相場をコントロールすることなどできないし、完璧に読みを当てることもできない』としっかりと胸に刻むことを強くお勧めする。結局、自分のトレードへの自信があるからこそ、
こういう謙虚さの裏付けとなる。いいか、ノーベル賞を受賞した数学者をチームに迎え入れたヘッジファンドさえ破たんしているんだぞ。過信や慢心が如何に危険であるかという事実は、本当の痛みを経験した者でなければ分からないかもしれないな。

自尊心をトレードに持ち込んだ際の最大の問題は、それが意思決定の要因となってしまうことだ。平均的に最大の利益を生み出す”正しい判断を下すこと”こそが、トレードの目標だったはず。
トレードに自尊心を持ち込むことは、そこに新しい目標を持ち込むことになる。つまり、最大の利益を生み出そうとしながら、同時に自尊心を保とうとするわけだ。

新しい目標は異なった判断を下すことに繋がるかもしれないし、その結果はきっと最悪だ。結果的にあなたの自尊心はあなたの儲けを食いつぶす(もしくはマイナスにする)ことになる。

あなたは自分の自尊心のせいで、トレードで罠にハマるかもしれない。よくある罠は次の通りだ。



(1)保有すべきではない含み損を損切らない

心理的には損切りは降伏のようであり、敗北と同一視される。自尊心が燃料となったトレードでは、損切りは非常に魅力のない行動と思われる。特に、悩んで選び抜いた挙句にエントリーしたポジションには個人的な感情を持ってしまい、なおさら損切ることができない。

自尊心の過度な影響によって関係のない要因を考慮に入れ、関係のないことを考え出してしまうかもしれない。例えば、

・損切りしたら臆病者になるのだろうか?

・損切りした直後に相場が思惑方向へ進んだらマヌケだろうか?

・自分の相場観が間違っているはずがない

結果的に、取引ルール(分析と確率)が損切りと定義している場面で保有してしまい、損失の拡大を許すことになってしまう。




(2)保有すべきではない含み益を利食わない

これは前項と真逆の例だが、心理的に利食いが敗北のように感じられる時がある。利食った後に更に大きく思惑方向へ相場が進むと、利食ったことへの後悔が残ってしまう。これを繰り返すと、今度は保有しているポジションを利食えなくなってしまい、せっかくの含み益を飛ばしてしまうことがある。実は、俺自身がこの問題で失敗するケースが多かった。今は多少改善されたが決して完璧とは言えない。そして今でもトレードにおいて最も難しいのは”利食い”だと思っている。

利食えない症候群を発症しているときも、自尊心の影響を大きく受けて歪んだ考え方が生まれてしまっている可能性がある。例えば、

・この程度の利益で満足するような陳腐なトレーダーではないという思い込み

・ここで利食ったらチキンになってしまうのだろうか

・トレンドの天井や大底で利食えるという幻想

・過去に経験した早すぎる利食い(あるいは自分)への復讐心

・たまたま利が乗っただけのポジションに感情移入してしまっている

含み益を利食わず更に大きな利益を狙った結果として損切りとなるのは、含み損を損切りできないことよりよっぽどマシだ。しかし、含み益に対して過度な期待を持つことにも問題がある。この原因は環境認識の甘さである。エントリー前の環境認識でリスクリワード比率を考慮していないのが原因だ。自分が見ている更に大きな時間軸で相場の大局を確認することで、含み益を利食えないという判断ミスを減らすことができる。

トレンドが何処まで続くか分からないのだから、利食いはトレードで最も難しい判断であり、明確な正解がないことを理解するべきだろう。いったん利食ってしまったのなら、例え更にトレンドが伸びたとしてもそれが正解だったと受け入れるしかない。



(3)取り返そうと躍起になる

トレードで負けが続いたときに、せめて『トントン』にしようとすることが良くないと説明したことを覚えているだろうか?この理由のひとつが自尊心なのだ。

最初に座ったときよりも少ない資金でディーリングデスクを離れることほど自尊心が傷付くことはない。それはあたかもトレードというマネーゲームそのものに負け、敗北感を味わうからだ。そもそもトレードをしなかった方が良かったと認めるような思いだ。

実際、それを避けようとするトレーダーが大勢いる。彼らは頑なに、最低でもトントンにしてプライドを取り戻そうとしてトレードを続ける。そして残念なことに、金を取り戻そうとするあまり、より投機的なトレードに走り出す。さらに疲れや飽きによって集中力が乱れれば彼らのトレードは悪化するだろう。金を失えば失うほど、少しでも金を取り戻そうとする。比較的少額を負けた時点で、『今日は利益を得られる相場ではなかった』と認めることを自尊心が許していれば避けられた悪循環だ。




(4)勝ち目のない勝負を挑む

トレードは、自分より判断が下手なトレーダーが吐き出した資金を奪うことで利益を得る。トレードに似たポーカーの世界に、『世界で10番目に優れたプレイヤーでさえも、9番目のプレイヤーとの対戦にこだわれば長期的には金を失ってしまう』という格言がある。

自尊心の強いトレーダー達は、自分が劣っていると自分自身にさえ認めたがらない。ネットでダウンロード販売されているEA(自動売買プログラム)や、トレード本を執筆するようなカリスマトレーダーの取引手法を購入しただけで自分も勝てるようになると”有頂天”になってしまうんだ。

確かにEAってのは、間違いなくプログラムされた売買ルール通りに取引してくれる。しかし、ルールに合致しているが損切りになり易いパターンという人間だけが持つ経験や勘ってものをプログラミングすることはできない。だから損するときは物スゲー勢いで損するぞ。また他人のトレード手法を自分自身で検証してみてトータルで利益が出ることを確認しないと、実弾で自分の”命金”をリスクに晒してエントリーすることはできない。つまり、他人から教わったトレードスキルを何度も反復して自分自身のモノにしないと意味がないということだ。

どんな取引手法でもルールには合致するけど損切りになり易い相場環境ってものがある。あるいは、なかなかルールに合致しない値動きもある。売買ルールさえあれば全ての値動きを利益に変えることができる、という無知なトレーダーがどれほど多いことか。

環境認識(相場の大局からリスクリワード比や他のトレーダーの思惑を読む)を怠り、短期的な値動きが売買ルールに合致したからという理由だけでエントリーしているようでは、いっぱしのトレーダーにはなれない。

だからいつも俺のコンサル生にしつこく、ルールに合致するタイミングを待つ前に環境認識をするように伝えている。そうすれば、ルールに合致はするが損切りになりやすいケースを避けることができるようになってくる。それでも損切りになったのであれば、潔く受け入れろ!だ。

いいかい、あなたが見ているチャートの向こう側には、あなたより数倍上手なトレーダーが数多く存在する。そんな彼らと駆け引きして金を奪い合うのがトレードだ。チャートはプログラムが自動的に作り上げたものではなく、世界中のトレーダーの思惑がチャートを形成している。

確かに自分の取引ルールを持つことはとても重要だ。でもその前にトレードとは、トレーダー同士の駆け引きを行うマネーウォーズであることを忘れるな。勝負どころが読めない、または駆け引きができない者が生き残れるほど甘い世界ではない。




(5)カッコいいトレードをしようとする

Youtubeでは、成功があまり望めない場面でもカッコいいトレードをしようとする意図が見受けられる動画がある。マイクでギャーギャー大騒ぎする気持ち悪りぃ動画もあったな。

損切した直後に即ドテンして損切り額を穴埋めしたり、ほんのり利益を出しました、スゲーでしょ俺、って具合の動画もあった。もちろんそこまでのスキルを身に着けるまでの過程は容易ではなかったはずだ。多くの失敗を経験し、動物的な勘が養わなければ1分足や5分足で一貫した利益を抜き取ることは難しい。

特定の大相場でしか絶対にスキャルをやらない俺からすれば、例え薄利であっても如何なる相場からでも利益を抜き取るプロのスキャルパーは凄いと思う。

でも、そのスキャルピングは初心者にも再現性があるのだろうか?またそのトータルの収支は?労多くして功少なしではないか?金額ばかりにフォーカスして損益比率の概念が欠けてはいないか?初心者トレーダーがFXとはスキャルピングで稼ぐものだと勘違いしないだろうか?5pips上等などの合言葉や一日20pipsを目指しましょうとか、トレードはお役所仕事じゃない!奪える時に可能な限り根こそぎ奪って行くのがトレードだ。

そんなYoutubeのスキャル動画を観た初心者トレーダーが勝てない勝てないと俺にメールを送ってくる。彼らはコンサル生ではないし、逢ったこともないので俺がアドバイスを送る義理はない。そもそもスキャルピングをやってんだから損益比率が改善されるはずがない。

俺自身、初心者時代に散々スキャルピングをやって、骨折り損な草臥れ儲けを長年経験したから、一時的にせよ勝率を捨ててまで損益比率を改善するためにスイングやデイトレを構築した経緯がある。だから勉強中のトレード初心者にスキャルピングを勧めない。初心者だからこそ、含み益のプレッシャーを経験するべきなんだ。スキャルピングの保有時間に身体が慣れてしまうと、時間を掛けて大きな利幅を抜き取る感覚が身に付かなくなる。

潜在意識ではみんな金(カネ)が目的でトレードを始める。でも、せめて顕在意識のレベルでは、”正しい判断を下すこと”だけに意識を集中してごらん。そしていつか潜在意識レベルでこの意味が理解できた時、エントリーに躊躇せず、損切りしても動じない鋼のメンタルを身に着けたトレーダーになれる。ん~?、鋼のメンタルではなく、柔軟で論理的な思考ってところだろうな。

決して恰好をつけるためにトレードなんてするもんじゃない。今でも俺なんて、頻繁に地味な損切りをしてる。だから、俺は常勝(勝率100%)トレーダーではない。そして心の底から相場は分からないと理解している。損切りするのが自分の実力で、利食えたら運が良かった、と思うくらいがちょうどいい。




自分の自尊心を抑制するか、最悪でもコントロールすることを学べば、理想の自分と現実の自分のギャップに悩むことを防げるはずだ。自尊心を持つことや誇示すること自体があなたを一貫した利益を抜き取るトレーダーから遠ざけるというわけではない。それがあなたの決断に影響さえしなければいい。

実際に、映画『ウォール街』に出てくるゴードン・ゲッコーのように自信過剰な大物投資家は存在すると思う。それでも、『私が人より優れている点は、間違いを認められるところです。それが私の成功の秘訣です。』とジョージ・ソロスは言っている。あれほど偉大な投資家がこんなに謙虚な言葉を残している。

自尊心はあなたの敵だ。トレードでのあなたの他の欠点と同じように、自尊心を排除するように努めよう。


最後に、ポーカーで全損させた相手には一言、
『Just Lucky(ツイてただけだよ)』と言うようにしている。

相手を刺激せずチップをRebuyしてもらい、もう一度俺にオールインしてもらって”根こそぎ頂く”ほうががいいじゃないか。





あ、書き忘れた!
正しい判断を下すには、
期待値がプラスとなる
売買ルールが必要だぞ。
それすらない者には、
今日の記事は何の意味もない内容だ。






次回は、あらゆる感情を決断から排除する重要性について書く。

⇒ 賭け事で成功するために必要な思考習慣⑥





FXパーソナルコンサルティング


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